食堂の白井さんとこじらせ御曹司
「えっと、ではコインランドリー設置に向けてご意見くださいと掲示板に張り出せばよろしいですか?」
「はい、師匠!それはもちろんですが、どういうコインランドリーが求められているのか、師匠のご意見もうかがえればと」
「あの、黒崎さん……。名前「し」しかあってませんよ?「ししょう」ではなく「しらい」です。食堂の白井です」
 なんだか、ちょっと黒崎さんがおかしくなってしまっています……。
 大丈夫でしょうか。
「白井師匠!ライバルなんておこがましい宣言をした私を許してください」
 え?
「同じ学生からの声に答える役割を担うライバルだとはじめは考えました」
 ま、まさか、食堂に寄せられる、あのライバル君は……。
「だが、白井師匠の返答は学生たちが楽しみにしている。一方私の返答は、バカにしたと学生を怒らせてしまう……」
 それは、まぁ、私もいつか同じように気持ちの行き違いが学生と起きるかもしれませんから……。
「学生からのSOSの書かれた相談用紙、少ない情報から多くのことを読み解き、そしてよりよい解決策を瞬時に導き出す……すばらしいです!師匠と呼ばずになんと呼べば……」
「白井と呼んでください」
 そもそも、誰かのことを師匠と呼ぶ人を、私は知りません。日常生活で師弟関係を持っている人、私の周りにはいません。
 なぜ、黒崎さんは師匠なんていう言葉を持ち出したのでしょうか……。
「白井師しょ……」
 一限終了チャイムが鳴り響いた。
「あ!私、まだ仕事がありますので、失礼いたします!」
 ……。
 ライバル君は黒崎さんだったのですね……。
 必要がないかと悩んでいたのも黒崎さんということですよね?
 ……。それは、相談係として必要とされていないという声だったのでしょうか。
 だとしたら……。
 今回のコインランドリー設置が実現されれば、学生から感謝されるでしょうし、必要な存在だと自信を持つことができるかもしれません。
 何はともあれ、これで、ライバル君からの謎メッセージも終わりますよね。
 黒崎さんにはどんなコインランドリーがいいか、自分なりにまとめたものを大学への申し送りと一緒に箱に入れればそれでもう、関わることもありませんよね?
 嫌いというわけではありませんが、あえて近づきたい人間ではありません。
 ……悪い人ではないのです。一生懸命なのです。
< 91 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop