独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「私は玲於奈さんのデザインが好きなんです」

玲於奈さんへのオーダーをキャンセルしたあとも、彼女のドレスが頭から離れなかった。ほかのどんな素敵なドレスを見ても、心を動かされなかったのだ。

玲於奈さんは以前、『仕事には一切私情を挟むつもりはないし、あなたを世界一きれいに飾れる自信がある』と私に言った。

それならば私は彼女が手がけるウエディングドレスを着たかった。

どうか私の気持ちが伝わりますように。

切願していると、彼女の顔がゆっくりとほころんでいく。

「……ありがとうございます。デザインが好きだと言ってもらえるのは、私にとってなによりもうれしいことです。……透哉もそれでいいのなら、ぜひ引き受けさせてください」

玲於奈さんは私たちに向かって頭を下げた。

私は透哉さんに眼差しを注ぐ。

「こちらこそぜひ頼む。玲於奈、ありがとう。琴子に最高のウエディングドレスを作ってやってくれ」

透哉さんが願い出たその瞬間、ふたりの間の空気が変わった。

関係を修復できたのだと知り、私は胸がいっぱいになる。

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