独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「……うん。私ね、透哉さんに会ったことがあるの。だから見なくてもわかるの。透哉さんは素敵なおとなの男性になっているって」

知的で穏やかで優しくて、それでいて華やかな彼の存在感を、直接会って確かめたかった。

だからあえて写真は見ずに、当日まで楽しみにしておきたい。

「あら、そうだったの? 孝太郎さんがいた頃かしら。透哉さんは本当に素敵な方よ。琴子は必ず幸せになれるわ」

確信しているような母の口ぶりに、私は微笑む。

お見合いは、来週の日曜日らしい。

こちらは私と母、あちらは彼と彼の両親の五人で行われるようだ。

母は「どの色留袖を着ようかしら」と早速思案し始めた。

私は母との会話を終えると自室に向かう。するとスマートフォンに伯父からメールが届いていた。

伯父は仕事で世界中を飛び回っていて、ほとんど日本にいない。今はイタリアにいるようだ。時差があるため、普段は電話ではなくメールでのやりとりが多かった。

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