セカンド・ファーストラブ
当たり前かのように、未来にはずっと伊澄くんがいるって信じて疑わなかった。

私、どこかで伊澄くんに愛想つかされるようなことしちゃったのかな。


ぐるぐると負の感情が頭の中を無限ループする。無限ループから抜け出せないまま、ドアの開く音がして伊澄くんが戻ってきたことに気づく。


「杏寿どうしたの?ドライヤーするよ?」


その声に咄嗟に目元の雫を拭って、極力視線を合わさないように「うん、おねがい」と言った。


きっと今目を見たら、思ってること全部言っちゃいそうで。


「·····どうした?なんか元気なくない?」


すぐにいつもと様子が違うって気づいてくれるとこ、こういう状況なのにやっぱり好きだなって思ってしまうから余計に辛かった。


「·····別になんでもないよ」

「うそ、なんでも良くなさそうだから言ってるんじゃん」

「なんでもないって言ってる」



ああ、この流れはだめだ。頭の片隅ではちゃんとわかってるのに。



「なんで言わないの?俺に言えないことがあんの?」



伊澄くんのいつもの穏やかで優しい声より少し尖った、ちょっと不機嫌な声。その声を聞いた瞬間制御していた気持ちが溢れ出す。



「·····隠し事してるの、伊澄くんでしょ」

「え?」


怪訝そうな、まるで心当たりなんてありませんとでも言うような態度。チロリと視線を上げて顔を伺えば、眉を顰めて不可解そうに顔を歪めていた。



「·····私、見ちゃったから。伊澄くん浮気、してるでしょ」

「·····は?」

「伊澄くんのスマホにLINEきたの、見えちゃったの。女の人からで明日楽しみにしてるって」



またじわりと瞳に薄い水の膜が張る。面倒な女だって思われてるんだろうな。
< 42 / 47 >

この作品をシェア

pagetop