虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
「ティ、ト……これ……」

 アルトリシアは気を失う前に右手の指輪を引き抜いた。ティトの前に置き、鉄格子とは逆方向を指差す。

 その壁には空気を入れ替えるための小さな穴があった。

「ルブを……外に……」

 愚かな父は意図せずアルトリシアに助言を与えた。

 この牢獄には魔石の力を封じる魔法が満ちている。おそらくはそれのせいでルブとティトの様子がおかしいのだ。ティトがルブほど影響を受けていないのは、父親が人間だからなのかもしれない。

 ティトはアルトリシアの願いを聞き、指輪をくわえて穴の側に置いた。鼻先で外へ押し出し、再び彼女のもとへ戻る。

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