虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
 これまで涙ひとつ見せなかったティトが、堰を切ったように泣き始める。怖がりで臆病なティトが気を保っていられたのは、彼なりにアルトリシアを守らなければと思っていたからだ。

 なけなしの勇気を振り絞ってマイネスに反抗したのに、小さな身体ではなにもできなかった。目の前で友達に向けられる暴力は、彼にとって自分が殴られるよりも恐ろしかった。

 ゼノハルトは硬い顔つきのファイスに向けて首を横に振る。

「まずは首謀者を捕縛すべきです」

 サフィが子どもたちを連れて出てきた屋敷を振り返って告げる。

「ここはモーゼル卿の別邸でしょう。そこに殿下が誘拐された理由を問い詰めなければ」

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