君との恋の物語-Obverse-

『さぎりは、何時にここを出たらいい?』
「うーん、6時くらい?」
『後1時間ちょっとね、OK。こっちきて!』
どこに行くの?私、聞きたいことが‥
『さぎりはさ、夢って好き?夢から覚めるの、夢ね。』
なにを言い出すかと思ったら‥
「うーん、あんまり好きじゃないかも。覚めたら切ないから。」
『だよね。俺もそう。今日は夢みたいに楽しかったな。』
え?君も?私も楽しかった。でも、やっぱり夢なんだ‥って思ったら本当に泣きたくなってきた。
『着いたよ。』
「え?」
『ここ。もうすぐ夕日が見られる。結構綺麗なんだよ。』
そこは、電気屋さんの上にある大きな駐車場。
沈みかけていく夕日が見えて、確かに綺麗。
『さぎり』
「ん?」
『今日は、夢か??』
「どういう意味?」
『んー、また誘ってもいいかってこと』
誘ったのは私ですけど
「うん、いいよ。」
『そうか。よかった。』
しばらく沈黙。なんか、切ない。

『あの』「ねえ」
同時‥
『君の名は!』「君の名は!」
爆笑。すごい、笑うって幸せ。なんか、今日が夢でもいいかもって思った。そりゃ、ずっと一緒にいられたら幸せだけど、また夢を見られるなら‥。
『ねえ』
「ん?」
『俺は、今日を夢にしたくない。』
「え、うん、だから、また誘ってくれるんでしょ?」
『うん。でもそうじゃなくて』
「どういうこと‥?」
なんか、息が詰まる‥。君のそんなに真剣な顔、初めて見る。
『こういう日を日常にしたいんだ。つまり‥』
え?ちょっと待っ
『さぎりが好きだ。ずっと一緒にいてほしい。』
嘘‥こんなことって
「それ‥本当‥?いつもみたいに嘘だよなんて‥」それ以上は言えなくなった。君があまりに真っ直ぐに私を見るから。
「私も‥」
『ん?』
「私も好きです。君が」
君が目を見開く。
『本当‥か?』
照れてるの?ちょっとからかっちゃおっかな。
「私は君みたいに嘘だよーなんて言いませんー!」
『そうか‥よかった』
君の目に涙が浮かんでる‥え?泣きそうなの?
『たまに電話したり、出掛けたりしてたけど、本当は不安だった。俺みたいな相手が他にもいるかもって』
それ‥私と同じ。
『もっと早くに言いたかったけど、怖かった。今日のデートも、ちょっと強引に決めちゃったし。あの強引さは‥ちょっとした照れ隠しだ。』
なんか‥可愛いな君。
『言えてよかった。メリーゴーランドに乗るとき、寂しそうな顔してたから、守りたいと思った。告白を決めたのは、実はあの時だ。』
意外と行き当たりばったりなのね。でもいいな。こうやって、少しずつお互いのことがわかっていくのね。
『彼氏ができる前に、言えてよかった。好きだ』
って言った君の目から、一滴の涙。そんなに好きいてくれたんだ。ありがとう。
私は、たまらず君を抱きしめた。少し背の高い君の首に思い切って腕を伸ばして、頭を抱き抱えるみたいにして。君のたくましい腕が、私の背中に回って、力強く抱きしめてくれた。
『夢じゃない』
「うん。夢じゃない」
本当の安らぎ。これが、日常になっていくのね。
「好きな人の名は?」
『‥さぎり』
「大好きよ」
『俺もだ。心から、今日誘ってよかったと思ってる』
だから‥
「誘ったのは私」






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