篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。



……このままだと無意識にキスしてしまいそうになって、慌てて距離を取り、そろそろ行かなくてはいけない事を理由にそのまま教室を出ていこうとしたら倉科が応援の言葉を掛けてくれた。


「頑張って!」



その一言だけで、一気にやる気がみなぎってくるから、単純にもほどがある。


好きな子から応援されたら、勝つしかないっしょ?


……よし、絶対1位を取ってくるからな。

ニヤけた顔は、出番が回ってくる直前までなかなか治らなくてさっそく瑞季に指摘されてしまう。



「うわ、ニヤニヤしてる。気持ちわりぃ」


うっせぇ、本命にはしどろもどろのお前だけには言われたくねぇし。



途中でバトンを落としたのもあって、俺のチームは最下位だったけど、ゴールまで一直線のところで2位にまで追いついた。


瑞季が頑張ってくれたから、なんとか1位を取りたいという思いはあるものの、前を走る3年は陸上部なだけあって追いつく気配がない。


もうこのままゴールか、と半分諦めかけた時


倉科が3階の窓から顔を出して、なにか叫んでいることに気づく。


口の形で“大好き”って言ってるのが分かり、まだリレーは終わってないのにその場に崩れ落ちそうになった。


はぁーー、何あのかわいい生き物……また柄もなくニヤけちゃうじゃん。


誰も聞いてないと思ったんだろうけど、
俺には伝わったよ。


両思いだって、自惚れるけどいいよな?


頑張るから、最後まで見守ってて。


< 150 / 180 >

この作品をシェア

pagetop