あなたに巡り会えてよかった…
翌日、私はビーチでゆっくりと過ごす。
せかせかと観光しないでホテルでゆっくりするのも楽しいものだ。

ビーチでドリンクを頼み読書をする。
私は毎回2冊は必ず空港で買ってくることにしている。今回は恋愛もの1冊、推理小説1冊を購入した。
海外のビーチで好きな本を読む…なんて贅沢なんだろう。
私は木陰になっているところにあるビーチチェアを確保しゴロンとする。
暑いけれど木陰にいれば心地よい風が吹いてきて眠気を誘う。
ダメだわ…眠い…
一眠りしちゃおうかしら…。
ここはプライベートビーチで、そもそもホテルの人以外は入ってこない。
その気持ちの緩みから私は眠ってしまった。

ふと目が覚めると私の身体にバスタオルがかかっていた。

あれ。タオルなんてかけていたっけ?

ふと周りを見ると隣のビーチチェアには男性が1人横になっていた。

サングラスをしているが日本人なのでは?と思う。この人がかけてくれたのかしら。

寝ているようなので声をかけず、私は読書を始めた。

しばらくすると彼は伸びをして目を覚ました。

私の方を見ると
「あれ?起きたの?よく寝てたね。」

「タオルありがとうございます。」

「どういたしまして。木陰だから寝始めると涼しいかなぁって思ってさ。女の子1人っていうのも心配で離れられなかったんだよ。」

「ごめんなさい。つい眠くて…。プライベートビーチだから気も緩んじゃって。」

「プライベートとはいえ心配でさ。俺がお節介なだけだから気にしないで。こっちこそ勝手に掛けてごめんな。」

「そんなことないです。確かに掛けてもらってよかったです。」

「こんなところに1人でいて一緒に来た人は泳いでるの?」

「私1人なんです。」

「1人ー?!珍しいね。でも俺も1人。俺はダイビング目的で来てるんだ。普段はこんないいホテルには泊まらないんだけど今回は安めのホテルが取れなくてさ。でもダイビングしたくて、ちょっと頑張ってここにきたんだ。」

「ダイビングですか。いいですねー!私も沢山ではないけど潜ったりします。サイパンで潜った時に海の青さに驚きましたー!
どこにいるのかわからなくなるくらいで自然のスケールの大きさに声も出ませんでした。」

「そうなの?!ダイビングいいよな。魚の中にいると自分がよくわからなくなるんだ。海の広さに心が洗われる。亀がいたらついて行きたくなる…。海に潜り始めて自分の世界観が変わったんだ。こんなに広い海の中にいる自分はなんでちっぽけなんだろう。自分の悩みってなんて小さいんだろうって。…って何語ってるんだろ。」

「いえ、分かりますよ。広い海の中、聞こえてくる音もない。こんな世界の中で自分はなんて小さいんだろうって思ってました。でも今は海の外でもそうなんです。」

なんだか急に口からそんなことが自然と出てしまった。
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