生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「ハルルがそろそろお風呂からあがる頃だと思って来てみれば、そんな無防備な格好で廊下に出るなんてイケない子だね」

頭から上半身を覆うほどの大判のバスタオルをスッポリとハルルに被せてきたミシェルは、そのまま背中側からハルルを抱きしめた。

ハルルは、そう言われて初めて自分の格好を見下ろす。

確かに、フリフリレースに、大きく襟ぐりの開いたネグリジェは多少は色気があるとも言えなくはないが、生地が薄いとはいっても下着が透けるほどではなくおしゃれの範疇だ。

太もも半分の長さの下穿きだって、17世紀のヨーロッパなら『生足見せるなんてはしたない』なんて怒られたかもしれないが、ここは田舎だし、前世でミニスカートをはいていたハルルにとっては恥でもなんでもない。

「大人のお兄さんにとって、こんな貧相な15の小娘の寝間着姿なんてどうってことないわよ、ねえ?」

ハルルはそう言って笑い飛ばそうとしたのだが、

「だめだよ、ハウルがいくら紳士といえ男は所詮狼なんだから」

「えっ?やっぱりハウルは狼の獣人さんたったの?」

まるで噛み合わない、冗談のような兄妹のやり取りに、驚いて目を見張るハウル。

「確かに俺は狼の獣人だが、ミシェルが言いたいのはそういうことではないのでは・・・」

と、呆れたように呟いていた。

「考えてみたら、男は狼って言葉は、狼さんに失礼な言葉よね?訂正すべき事案ではない?」

前世でも今世でも使われるものの例え。

童話の赤ずきんちゃんが語源だろうけど、狼の獣人の立場に立って考えると決して感じの良いものではない。

「よし。男は狼ということわざは、この島国の辞書から撤去しましょう」

満足気に一人頷くハルルを見て

「変な奴だな」

と、ハウルは思わず呟いていた。

「よく言われる」

微笑み合うハルルとハウルに、ミシェルがすかさず横槍を入れた。

「お子様で鈍感なハルルにはお仕置きが必要そうだね?」

「ちょっ、ミシュ、シスコンが過ぎるんじゃない?過保護が過ぎれば虐待なんだよ」

「へえ、それってどういう意味か、しっかり教えてもらおうかな?」

ズルズルと引きずられて行くハルルと引きずるミシェルを見送りながら、ハウルはガシガシと頭を掻いて溜息をつき、

「前途多難だな」

と、天井を仰いだ。


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