生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「ちょっと!浮かれるのは勝手だけど、一向に話が進まないじゃない。天才が聞いて呆れるわ。ミシェルなんてハルルに甘えたの、ただの我儘王子じゃない」

誰が何を言っても、『ハルル大好きヤンデレモード』を消そうとしないミシェルの溺愛に水を差したのは、ハルルの愛しき妹(実は従姉)のカノンであった。

「女同士、ハルルの一番になれないからってヤキモチを妬かないでくれるかな、カノン」

「誰がヤキモチ妬くって言うのよ。それに言っておきますけど、世の中には百合や薔薇って言って、女性同士の恋愛だって庶民権を得られてるんだから、自分がハルルの一番だなんて勝手に自惚れないでよね」

「聞き捨てならないな?僕からハルルを奪おうっていうのかい?妹と言えども容赦は・・・」

「ストップ、ストップ。わかったから二人とも喧嘩をしないの。ね?」

ミシェルとカノンの喧嘩をハルルが宥める。

幼い頃から繰り返してきた一連の流れにハルルはなんだかホッとしていた。

「ハルルが言うなら仕方ないな」

「何が仕方ないよ!仕方ない状態なのはミシェルの方じゃない」

「こらこら、カノンも横道にそれちゃってるわよ。私が話を元に戻しちゃってもいいかしら?」

どうしようもない兄妹喧嘩をいとも簡単にヤエルが止める。

ずっと行方をくらましていたはずのヤエルと、ミシェル・カノン兄妹のなにやら気のおけない関係に、ハルルの疑念がムクムクと大きくなっていく。

「ねえ、もしかして、前世も今世のこうした関係も、ヤエル妃とミシェルが策略を巡らせてきた結果なの?」

耐えきれずに、心に巣くっていた疑問を口に出す。

「いいえ、この世界の魔女は直接精神に作用する魔法は使えないわ。私が日本で波瑠ちゃんに近づいたのは意図的でも、あなたが私に懐いてくれたことや、ミシュというキャラクターを生み出し推していたことは、波瑠ちゃん自身の気持ちが導いたものよ」

ヤエルの真剣な表情と裏表のない真摯な言葉に、ハルルはホッと安堵のため息をついた。

運命とか、阿吽の番とか、ハルルの知らないところで勝手に物事が進んでいる。

自分で選んできたはずの人生が、誰かの意のままに操られていたとしたら怖い。

「でも、両親に愛されない人生は決まっていた、って・・・」

「それは未来予知のようなものね。地球でいう“修行“とか“カルマ“といった思想に近いかしら?前世の果たせなかった課題を今世で果たすために生まれ変わった、というような・・・そんな客観的な事実は視えるのよ。魔女は。但し近親者に限るけどね」

波瑠の前世のカルマは、今世でミシェルという阿吽の番に出会うための布石。

わかるようなわからないような・・・。

しかし、前世があまり家族愛に恵まれていなかったために現世での幸せがあることは確かだ。

日本の波瑠が望んだ通り、こうして八重さん、もといヤエル妃のそばに転生し、愛する家族や友人と出会い充実した18年間を過ごすことができた。

例え本物と信じて疑わなかった現実が、一息で簡単に崩れ去る、砂上の楼閣であったとしても・・・。

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