美しき花は罪
エレーヌは高級料理店に来るのは初めてのため、ラファエルがおすすめなどを色々と教えて料理を注文する。そして料理が来るまでの間、二人は黙って夜景を見つめていた。

この街の夜景は、まるで宝石箱のようだ。色とりどりの宝石が輝いているかのように美しい。

「……綺麗ですね……」

ポツリと切なげにエレーヌが言う。その瞳は悲しみに揺れていて、ラファエルはそっとエレーヌの手を取った。

「確かにここの夜景は美しいです。ですが、あなたの方がもっと美しい。きっとあなたの笑顔はどんな花にも負けないほど美しいのでしょう」

ラファエルがそう優しく言うと、エレーヌの瞳から涙がこぼれ落ちる。エレーヌは「ごめんなさい」と謝り、ラファエルは「泣いていいんですよ、ここは個室ですから」とエレーヌを抱き締めた。エレーヌはラファエルの腕の中で泣きじゃくりながら、全てを話していく。

エレーヌは既婚者で、結婚してもう三年になるそうだ。しかし旦那が何度も浮気をし、そのたびに傷付けられているのだ。
< 11 / 23 >

この作品をシェア

pagetop