トライアングル 下

そこで亮輔は1つ疑問になる。
「どうして女神は梨緒を木材の下敷きにしたんだ?」
その問いに梨緒が一瞬下を向き、亮輔と目線を合わせ
問い正す。
「そもそもこの戦いに疑問を持たなかった?」
疑問?女神が現れ、能力を貰い、、、。
戦いに疑問、、、?戦い方、、、。何か意味があったのか?
亮輔が考えを巡らすが、一度戦いに身を置いていた為、
客観的視点から物事が捉えられない。
そんな亮輔に梨緒が答えを言い渡す。
「まず戦い方。お互いイメージして交互に好きな事が出来る以上、それが重要な戦いであればある程、自分の得意分野を攻める。つまり、お互いが勝ち続け勝負はつかない。」
その梨緒の言葉に亮輔は思い当たる節がある。
確か一番初め亮輔は全く同じ事を考えていた。
そこから"勝利の方程式"で、勝つ算段を思いつくのだが
結果、野球までで 2勝2敗。
結果を取っても梨緒の言っている事は間違ってはいない。
「そして、次に勝利条件。女神は初めに何を以って『勝負がつく』と言っていた?」
思い返してみる。
女神が暗雲の元告げた言葉、、、。
『お互い負けたくない争い。このままいがみ合った所で何も解決しないでしょう。そんなそなた達の争いに白黒つける為にわらわが力を貸しましょう。』
そこで亮輔は気付く。
「、、、言ってない!!」
そう。女神が言ったのは『力を貸しましょう』それだけ。
つまり、、、。
梨緒が答える。
「たとえ、どちかかが大差で勝っていても、お互いが
認めない限りこの戦いは終わらなかった。」



「地球人は争いが好きな生き物だからのう。」
女神が語る。
「続けてさえいればどんどんエスカレートしていき、
頭に血が上った段階で武器を渡せば、結果は自ずと見えてくる。」



亮輔はそれを実感していた。
お互いが好きな事を言える状況。
だからこそ考えた勝利の方程式。
野球の提案に至っても、このままではいつまでか続いて
負けてしまう。そう、思ったからの提案だった。
「そう。女神は戦いを続ける事が目的。」
「それがエスカレートしていけば結果はどうなるか。
先は見えてくる。」
拳銃で殺されかけ、バズーカで死を覚悟した瞬間、、、。
もう殺すしかなかった、、、。
梨緒が力強く口調を変える。
「でも、それはどちらかが死ぬという"結果"ではなく、
"経過"にこそ意味があったの。」
亮輔は梨緒の語りに飲まれるように聞き入る。
「それはこの施設の破壊!!」
施設の破壊!?まさかの展開に唖然とする。
まず、施設という言葉が梨緒の口から出てくるなんて
予想だに出来なかった。
そういえば先ほどからやけに女神や戦いについて詳しい。
そしてようやく梨緒が全く見慣れない服を着ていることに気付く。
「梨緒?施設の破壊って、、、。君は一体何者??」
亮輔のキョトンとした表情とは真逆のキリッとした表情で
梨緒は答えた。
「私は公安調査庁の審理室のエージェントなの。」



「そう!わらわ達の計画はこう。」
侵略の為に地球を訪れた女神一行はそのテクノロジーを使ってすぐさま攻め入るつもりだった。
しかし、そこで思わぬ妨害が、、、。
ロズウェル以来、宇宙人の脅威に怯えた地球人は、 
各地に施設を設け地球侵略を不可能にするバリアを張った。
それは地球外からの未確認の飛行物の侵入はもちろん、
未知の生命体の侵入を拒むものだった。
そこで女神が取った行動は、地球人への変装。
変装をして侵入に成功した女神はまず、侵略の妨げになる施設を断定する為の調査を始める。
そこで見つけたのが梨緒だった。
女神の能力で記憶を探り、施設の場所を掴んだ女神。
そこで思わぬ収穫をする。
梨緒の記憶にいた、梨緒を巡る亮輔と祐介の姿。
そこで今回の戦いを思いついた。
「あえて、戦いの舞台まで変える事で、最終的に、もって行きたかった施設への移動を自然にする。」
舞台の移動。それは施設への誘導。
「そして、うまくエスカレートするように仕向け、武器を持たせ、施設に行かせれば。」
エスカレートする戦いの仕組み。ゲームや漫画の思考で
最終的な戦いの方法は想像が出来た。
いや、女神ならおそらく違う方向に向かって行っても
結果同じ結末まで導いてくるであろう。
「武器での戦いの衝撃で施設を破壊出来る。」
そこには偶然もある。
偶然、そのバリアの機械を破壊出来た事。
もし、破壊出来なかったとしても2人の破壊に乗じて
"飛ばす"能力で機械に何かを落下させて破壊するだけの事。
しかし、まず戦いわせた事。それは、、、。
「地球人の手で自ら破壊させるなんて!流石女神様。
やる事が違う!」
侵略を最大限楽しんでいた。



「これがその機械。」
一通り女神の侵略の方法を説明した梨緒が
破壊されてコードがむき出しになった機械の前に立つ。
どう操作していたかも分からないほどの無残に壊れた機械に、亮輔達の争いの凄まじさが現れている。
「私の父はね。防衛庁の長官なの。」
その機械の前で梨緒が事の顛末を話し出す。
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