トライアングル 下

時は少し遡る。
走りながら発砲した亮輔は
偶然当たった足場が崩れたのに気を取られマシンガンを連射している祐介に気付く。
その隙を突き
祐介の横にある何かのタンクから出ているパイプに狙いを定める。
あえてパイプを撃ち抜いたのは
タンクから出ていればおそらくパイプに通っているのは
ガスか又は水。
そこを打抜けば、吹き出すガスか水で
さらに動揺を誘えるだろう。
それを狙った理由は、、、
亮輔は音や飛沫で視界と聴覚を奪い、
存在と足音を消して極力祐介から遠ざかる。

祐介にそれは全く気づかない。

なぜなら亮輔が居るのは2階。
祐介が気を取られている隙に
近くの別の階段を駆け上がり階段の上の
2階の部屋の中を移動していた。
つまりは、吹き出した蒸気で、視界と聴覚を奪い、
その間に上の階に移動したのだ。

マシンガンをしっかり構え、
左右にゆっくり振りながら
ドドドド!
と、たまに弾を連射しながら
一歩一歩ゆっくりと
歩みを進めながら柱の陰をくまなく探す祐介。
こみ上げる怒りを抑えながら
今度はいつ弾丸が飛んでくるかも警戒しながら
周囲八方を常に確認する。

そんな祐介の姿を亮輔の赤いスコープの照準が捉える。
「もらった!」

チュン!
祐介の右の太ももを
今までで一番静かに
しかし確実に亮輔の弾丸が撃ち抜く。

《『マシンガン』→『うつ』=『スナイパーライフル』》

狙撃銃と呼ばれるその銃は高倍率の光学照準器(スコープ)
と長い銃口によって
遠距離の射撃を容易にした銃。





亮輔が2階に上がった事。遠くまで避難した事は
ただ安全な場所へ逃げる為では無かった。
遠くに離れる事でショットガンの射程から離れてしまうが
同時にマシンガンの射程の外へと出ることが出来る。
そこへこのスナイパーライフル。
この銃なら遠くからの狙撃が可能だった。
そして、この高さ。
2階から1階の祐介は丸見え。
「これぞ、恰好の的!!」

ももを撃たれた祐介は力が抜けるように右ひざをつく。
「!!うが〜〜!!」
ひざをつきながらも抱えたマシンガンを狙ってきたであろう上空へ
ドドドドドドドド!
連射しながら振り回す。

祐介の弾丸は全く亮輔には届かない。
当たらない事を確認すると
亮輔はスコープでもう一度狙いを定め、一発打ち込む。
「もういっちょう!」

チュン!
今度は祐介の左肩を弾丸が貫通する。
「うが〜〜!!」
徐々に追い詰められる祐介。
弾痕からは血が流れる。

「さぁ!次は左足か、右肩か、、、」
亮輔がスコープで狙いを定める。

祐介が立ち上がろうとついていた右足に力を込める。
弾痕から流れ出す血。走る痛み。
「が〜〜、」
しかし頭に上った血が、吹き出す怒りが
ついには痛みを凌駕した!
ついていた右ひざを上げ、しっかりと地面に足をつけると
踏ん張るような体勢から
「うお〜〜!!」
グッと身体を持ち上げる。
同時にマシンガンをもっていた右肩あたりが輝き
マシンガンが消え、替わりに現れたのは、、、。

「!!まさか!!」
亮輔が捉えていたスコープで祐介の持つ
その"もの"の姿を確認する。

《『スナイパーライフル』→『うつ』=『バズーカ』》

大砲と呼ばれる大型の発射器。大きな弾薬の入った弾丸に
火をつけ、その爆発の推進力で弾を飛ばす。
その破壊力と射程から、多くは大型の装甲車、建物。
広範囲での破壊を目的に使用される。





祐介の右肩に担がれているのは
緑色の大きな筒状のバズーカ砲。
「吹き飛べ〜〜!!」
担いだバズーカを右手でしっかり支え、
左手で引き金を引く。
ドーーーン!
低く大きい爆発音と共にバズーカ砲から弾が発射される。
発射の際に後方から吹き出た爆風と煙。
その衝撃だけで辺りのものを吹き飛ばしてしまいそうだ。

祐介の放った弾は孤を描き
亮輔が入っていたであろう2階部屋に到達する。

これは感覚で放った弾だった。
自分の身体を貫通した弾丸の角度でなんとなく
高いところ。そこに見えた部屋のような扉。
カンで放った弾丸。もちろん亮輔の位置を掴めているわけではない。
部屋の中?部屋の外?別の扉の中?
そんなのお構いなしの一撃が炸裂する。
ドカーーーン!!
扉の入口から入った弾が部屋の室内で爆発。
大きな音と煙。
爆発の衝撃で煙の中から
鉄の塊やコンクリート、何かの部品など
すべてが入り混じった破片が勢いよく吹き飛んでくる。
その破壊力の大きさが
3倍以上に吹き飛び広がった扉の入口の大きさから伺える。
どこに居ようが同じ。
問答無用。手当たり次第に吹き飛ばすだけだ。
そう言うかのように
祐介は
ドーーーン!
ドーーーン!
手当たり次第に弾を打ち込み
亮輔を炙りだすように破壊していく。

ドカーーーン!
ドカーーーン!
弾を撃ち込まれる度に壁が吹き飛び
室内をさらけ出しながら
形を無くしていく部屋。
瓦礫と煙が散乱する。


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