私に恋を教えてください
君のせい
「この、少し先に雰囲気のいいホテルがあって、今日はそこを予約しているんだけど」

車の中でそう切り出されて、どきんとした柚葉だ。
「はい……」

「そんなに固くならなくても、君が嫌がるようなことはしないよ」
「固くなんて……」

須藤がくすくすと笑う声が、車の中に響いて真っ直ぐ前を見つめる柚葉を見て笑う。
「それで?」
笑われて、柚葉も力が抜けた。

「それは……なんか今固いって認めたら、課長はもうやめちゃうんじゃないかって思ったからです。嫌がっているなんて思われたくないんだもの」
「嫌がってはいないんだ。覚えておくよ」

「……っ!時々!課長って、大人ですよね!」
「時々と言うか……もう大人以外での何者でもないと思うけれど」
「そうなんですけど。私も大人です」
「そうだね」

そのくせ須藤は助手席に座る柚葉の頭を、優しく撫でたりする。
「また課長、に逆戻り?さっきは名前で呼んでくれたのに」

柚葉は言葉を詰まらせた。
「さっきは勢いがあって……」
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