私に恋を教えてください
私のですっ!
透悟が部屋に戻りパソコンを立ち上げ勉強をしていると、コンコンとノックの音がした。
「どうぞ」
そちらを見もしないで、透悟が答える。

「君らしい部屋だね」
その声に透悟はギョッとした。
「なんでっ……」

「少し話したいな、と思って」
駆琉はけろりとしていて落ち着いている。その揺らぎのなさが悔しいけれど大人だ。

「言っておきますけど、俺を丸め込もうと思っても無駄ですよ」
「だろうね。そんなことをしようとは思ってない」

「兄貴ぶられたら、俺、即キレると思う」
「そんな事しないよ。本当に話したいって思ったんだ。柚葉をすごく大事にしているのが分かるから。俺は確かに家族ではないけれど、俺も柚葉を大事にしたいことには間違いはないからそれは分かってほしい」

確かに兄貴ぶるでもなく、今思っていることをそのままストレートに透悟に伝えていることは、透悟にも分かる。

「知ってる……」
透悟はそう返事を返した。
でなければ、あの祖父が認めるはずはない事は予想がつくから。

透悟は軽くため息をついて、駆琉に部屋にあるソファを勧めた。
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