私に恋を教えてください
「常務、あの……」
「あ、ごめんごめん。柚葉ちゃん、食べ方キレイだね」

「ウチは、子供の頃から母が厳しくて」
「なるほど。だとしたら、お母様に感謝だな。俺は立場上、いろんな方と食事をするけれど、一緒にいて、心地良いのは、やっぱり食べ方がキレイな人なんだな。だからこれから親交を深めようと思う時は、俺はまず食事を一緒にすることにしている」

そんなことを見られているとは、思わなかった。恥ずかしくも感じたけれど、柚葉は素直に感心した。

「経営者の方は色んなところをご覧になるんですね」
「んー?どうかなぁ?きっとね、経営者じゃなくても見ているよ。自然に。俺は分析するのが癖みたいなところがあるから、いちいちそんな事を考えてしまうけど」

「お勉強になります」
「柚葉ちゃんは素直で、よく気がつくところが好きだな」

「まだまだなんです」
「社会人としてはね、まだまだなところもあるよ。けど見ていて面白い。毎日色んなことを吸収しているのが、見ていて分かるからね。こー、お水をやると、どんどん大きくなる感じが面白い」

こー、と手を広げる侑也は大人でありながら、子供のような無邪気さがある。

一緒に居ても侑也との会話は、ウィットに富んでいて面白く、柚葉は彼が人を惹き付けるのも分かる気がした。
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