大人になってもまた君と
「はーやーく、言って?」
「……もうっ!健斗だけって言ってんの!ばかっ!」
「うん、知ってる」
私が恥を忍んで、仕方なくもう一回言ったセリフに顔色ひとつ変えることなく頷く彼を、今ここで思いきり一発殴ったとしてもバチは当たらない気がしてきた。
というか、私が好きなのは健斗だけってさっきも言ったんだから、普通に考えたらわかるでしょ!
いや、まぁ、考えてわかってて私をいじめるためにあえて言わせてるってことはわかってるんだけどね!
わかってるからこそ、ムッとする。
惚れた弱みか、それに抗えない自分にも。
恋愛は惚れた方が負けなんだ……と悟りを開いていると、
「肌……白いよな。ここ、赤くなったら……変な虫は寄ってこなくなるかもな」
「ちょ、待っ、なに言って」
─────ちゅうっ。
首筋に温かいものを感じたその瞬間、ちくりとわずかな痛みが走る。
キスマークなんてついていたら、大学でなんて言われるかわからない!
今度こそ抗うべき!
流されるな、私……!
そんな思いでろくに力の入っていない手で彼の肩を押すけど、文字通り、暖簾に腕押し状態。
結局、彼の思惑を阻止することは出来ず。
意味をなしていない攻防をしばらく続けた後、最後に水音を残してようやく離れていった。
「こんな見えるところに付けて……噂になったらどうするの!」
「別に今更いいじゃん。っつーか、俺たちが付き合ってるってこと、ある程度知られてるはずなのに、俺がいないところで言い寄られてんの、知ってんだからな」
「えっ、なんで」
「そりゃあ俺の彼女が可愛いのは有名な話で。その彼女をあいつが狙ってるだとかデートに誘われてるの見たとか、そういう情報をくれる友達がいるからな」