今は秘書の時間ではありません
秘密裏に?
私には分からないところでやはり色々動いていたのね。
話を聞く限り私は信用されてないからこの話に入らなかったのね…。
ふふ…まぁそうよね。
もうどうでもいいことだわ。

「そうでしたか。社長のお考えの通り動かれるのもいいかもしれませんね。」

「おい、なんだか他人事だな。」

「私にはもう関係のないことですから。」

「関係なくない。俺はこれから君にも俺たちと働いて欲しいからこの話をしている。俺はこの数ヶ月ダメ社長に徹してきたが君は愛想を尽かすことなく俺のために動いてくれた。俺のことをよく見て、先回りし、働きやすいようにしてくれていた。電話対応も来客対応も素晴らしい。社内での君は的確で社員からの信頼も厚い。俺は信頼に値する人間だと思った。」

「私は試されていたんですか…。」

「言い方に語弊があるかもしれない。試すようなことになってしまい申し訳ない。」

「この数ヶ月私は胃薬が手放せませんでした。社長の勝手に振り回されもううんざりです。社長に試されていたと聞き、改めてうんざりしました。一緒に働くのは無理です。社長への忠誠心はもうありません。」

なんてことだ…。
まさか断られるとは。
俺の頭は真っ白になった。
確かに彼女には多大な迷惑をかけてしまった。
だが、社内を見るためには仕方なかった。
仕方なかった、では済まないくらい彼女からの信頼を失墜させてしまっていた。
早くから彼女の仕事振りを見て優秀だと分かっていたはずなのについ困らせることが楽しくなり度を越してしまった。
俺は頭をもたげ何も言えなくなってしまった。

「社長、お腹もいっぱいになられたことですし、話も終わったようですのでお帰りください。」
そう彼女から帰宅を促される。

俺はここで引き下がるわけにはいかない。
なんとか彼女が辞めるのを引き留めなければ。

そう思うが彼女は立ち上がり、俺の退室を促してきた。

俺は何も言えず、立ち上がるしかなかった…。

「ごちそうさま。本当に美味しかったよ。また月曜日に話したい…。」

「お粗末さまでした。」

彼女はさっさと玄関に向かいドアを開けている。
さっさと帰れってことか…
はぁ…
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