貴女と世界を壊したい

いける!と思ってレイアップを構えた瞬間に、フッと眼前に黒いTシャツが現れる。


「えっ」


止まることができずふわりと私の手を離れたボールが、次の瞬間ベシャリと叩き落とされた。



「ナイスドリブルだけど、ごめんね〜」



目の前で申し訳なさそうに笑ったのは、茶髪でちょっとかっこいい感じの、たぶん先輩。


…それはちょっと容赦が無さすぎませんか?


「むぅ…」


地面にバウンドしたボールを奪った相手チームが、キュッと音をさせて走り出す。


切り替えがやたらと早いのは、やっぱり筋肉量の問題なのだろうか。



シュンとしょげつつ、私と急いで自分のポジションに走り戻る。


自分のミスを引きずるくらいなら守りで貢献する方がマシって思える、この攻守交替のスピード感は結構好きだったりする。


それに、人って思ってるより人に興味無いものだから、きっと私のシュートミスだって誰も気にしてないはず。




………背が小さいくせに無理にインするなとか、女はパス回しだけしてればいいのにとか、なにあの下手くそとか………思われてない、よね…?




< 8 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop