もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
奪いたい。
「高野さんが花宮先輩呼んでくれたんだね」
「うん。だって絶対私じゃ止められないから」
遅刻したけれど、やっと二限目に教室へ辿り着くことができた私に、クラスメイト達はとても優しくしてくれた。
みんな香坂先輩事件を知っていたらしく、下手すれば死んでいると騒ぎになっていたらしい。さすがに死にはしないと思う。
高野さんが呼んでくれた花宮先輩のおかげで、どうにか別の意味で助かったけど、逆に助けてくれた花宮先輩のせいでこんなに遅くなったとは言えなかった。
「奈湖はどんな恨みを買ったらそんなことになるの?」
「確かに。香坂先輩とか、明らかにヤバイやつじゃん」
「別に恨みを買ったわけではないよ……」
高野さんと話していたら、私の席に集まってきた早紀と彩菜はご愁傷様という表情をこちらに向けてきた。
恨みというより好意を向けられてしまった。その好意でさえ恐ろしいんだけども……。
私は肩を落としながら、香坂先輩との恐ろしい出来事を思い出す。
『ズルいな』
────そういえば。
香坂先輩の、あの言葉の意味ってなんだったんだろう。
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