もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




 電車を乗り継ぎ辿り着いたのは、駅を出てすぐの場所にある、デジタルアートミュージアムだった。


 日曜なだけあって沢山の人が並んでいて、私達もその最後尾に並ぶ。


 この場所は出来たばかりの頃、テレビや雑誌で沢山特集されていて、暗闇の中に咲乱れる沢山の花々を画面越しに見てからというもの、いつか絶対に来たいと思っていた。


 だから私は、最後のデートという悲しい現実を忘れて目をきらめかせ、隣に立つ先輩を見上げる。



「すっごく楽しみです……!」
「俺も。すごくキレイみたいだよね」
「はい!インスタにも沢山投稿あって、キレイなんです……嬉しい」
「俺も、まさかこんなに喜んでもらえるなんて、嬉しいよ」
「先輩は、何でここを選んだんですか?」
「デートスポット片っ端から調べたんだよ」
「えっ?」
「奈湖に喜んで欲しかったからさ。初デートって一番記憶に残るから」



 照れたように笑う先輩に、ぎゅうっと心臓を鷲掴みにされる。


 仕方なく付き合った私の初めてのために、ここまで尽くしてくれるなんて、本当に優しい人だ。


 きっと、私が彼女でいる限り先輩は、彼氏として甘い言葉を囁き、王子様のように隣に居てくれるのかもしれない。


 けど、それは花宮先輩の幸せには繋がらない。だから離れなきゃ。


 最後のデート、私もできる限り、先輩にいい思い出を作ってあげたい。


 ワクワクと悲しさと、色々な気持ちが入り乱れて落ち着かない。そんな中、いつの間にか列は進んでいて、私達はやっと屋内に足を踏み入れた。




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