もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜



 王子だって人間だもん。ただ本を買いに来て、駅のホームに立ってて、それだけで写真を撮られる。自分が知らず知らずのうちに他人に拡散されて望まず有名になっていく。


 それって、怖いことじゃないの?



「も、も〜!奈湖は大袈裟だなぁ」
「帰ろ帰ろ。雑誌買ってくる」



 静かな店内で注目を浴びていたことにやっと気付いたのか、二人はレジに向かって歩いて行った。


 私も漫画の会計しなくちゃ。


 ふと、王子に視線を向ける。すると、じっとこちらを見つめ、柔らかく微笑んでいた。突然王子の笑顔に当てられ、顔に熱が集まる。そんな私を見た王子の口元だけが小さく動いた。



 ────ありがとう。



 目を丸くする。ああ、よかった。お節介ではなかったみたいだ。


 私はペコッと頭を下げて、その場を後にする。



「(王子も大変なんだなぁ)」



 ────けど、その時の私は、自分のしてしまったことの重大さを理解してはいなかった。



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