もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜



「ふふ、おいひー」
「良かったね」
「先輩も食べます?」
「俺は甘いものが得意じゃないから」
「えー、もったいない」
「うーん、けど、そんなに美味しいなら少しもらってみようかな」
「はい!是非!」
「じゃあその一番大きなメロンを貰おうかな」



 ぴしりと私は固まった。先輩が指さしたのは、私が最後に食べようと取っておいた好物のメロンだ。え、やだ、うそぉ……。


 けど、先輩にこにこしてるし、連れて来てもらったし、メロン以外の甘いものは苦手なんだよね、多分。だったら、ここはこのメロンは……。


 私は泣く泣く先輩に向けて、パフェを差し出す。



「ど、どうぞ……」
「ふっ……ふふっ、あはははっ」
「え?先輩?」



 先輩はいつになってもパフェを食べようとせず、突然口元を覆い楽しそうに笑い出した。


 え?どういうこと?



「冗談だよっ、まさかそんなに大切そうに取ってあるのに、取るわけないよ……あはは」
「まさか、からかったんですか……?」
「ごめんね、意地悪だったね。けど、くれようとするなんて、奈湖は優しいなぁ」
「もうっ、酷いですよ……!」
「あー、可愛い。俺のことは平気だから、たくさん食べてね」



 まさかこんな風にからかわれるとは思わなくて、私は唇を尖らせた。




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