もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜



 上目遣いに先輩は私の返答を待っている。けど、私は先輩に貰って欲しいと思ってるのは事実だし、でも恥ずかしいしキャパが一杯一杯だし、じわりと目尻に涙が浮かんだ。


 嫌じゃないから困る。嫌だったら断れるのに。そんな私に、先輩は柔らかく微笑んだ。



「緊張しちゃう?」
「う、はい」
「嫌ではないって言ってたね」
「……恥ずかしくて」
「そっか」
「せんぱ────」


 
 すんっと鼻を鳴らし、瞬きをした瞬間、ふにっと唇に柔らかい何かがぶつかった。至近距離に瞳を伏せた先輩の美しい顔があって、やっと私はキスをしていることを認識する。


 心臓がバクバクと鳴り響き、息をすることも忘れ、この状況を飲み込むことに必死な私の頬を、先輩はすりっと指先で撫でる。そして、最後に小さなリップ音を鳴らし唇を離した。


 幸い周りには人はいなかったものの、私は口を両手で覆い、顔を真っ赤にする。



「なっ、えっ……えぇっ?」
「真っ赤だね。可愛い」
「いじわるです……」
「俺は奈湖に意地悪しないよ」
「うぅ」
「はじめてのキス、どうだった?」



 先輩がとても嬉しそうに聞くから、感想を言わなきゃならないらしい。私はゆっくりと声を発した。




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