若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜

父の突拍子もない頼み

「ミオ! 君にお客さんが来ている。日本人の年配の男性だ。店の入り口にいる」

 タブレットを手に、店舗のバックヤードで商品の在庫管理をしていた私は、ドア口に顔を覗かせた店主のマイク・アンダーソン氏に声をかけられた。

「日本人のお客さんが? わかりました!」
 
英語で返事をして、タブレットをデスクの上に置く。
 
 うちの店で品物を購入したお客さんが遊びに来たのかしら?
 
 アメリカ、南カリフォルニアに位置するロサンゼルスの観光名所であるハリウッド。ハリウッドスターなどの手形がある大通りに面し、日本のガイドブックにも載っているうちの土産物店は、日本人観光客がひっきりなしにやってくる。

 部屋の隅にある等身大の鏡の前に立って、胸元が大きく開いたショッキングピンクのTシャツを撫でつけて、ジーンズ素材のショートパンツから覗く脚を確認した。

 足元は動きやすいようにスニーカーを履いているが、踵を踏んでいた。壁に片手を置いて履き直す。

 背中の中ほどまであるストレートの黒髪を手櫛で梳いてから、バックヤードのドアを勢いよく開けた。

 この土産物店は街では最大規模だ。従業員もそれなりにいて、バックヤードから姿を現した私に、みんなは「Hi!」と手を挙げてくれる。

 私もにっこり挨拶をして、店の入り口に弾んだ足取りで歩を進める。
 
 マイクは年配の男性って言ってたよね。

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