若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 それからの彼は私を知り合いに紹介したり、自ら料理をとってきてふたりで食事をしたりと、周りの女性には目にもくれず一緒にいてくれた。

 パーティーが終わり、大奥さまと翠子さんはお客さまを送り出してから帰っていった。

「絢斗さん、私もここで」

 この状況をひとりになって考えなければと、彼に頭をペコッと下げて回れ右をする。

「ちょっと待て。脱いだ振袖をたためるのか?」

「えっ? たたむ……?」

 振り返りキョトンとなる。

「それにホテルをチェックアウトしてうちに来るんだ」

「展開があまりにも早いです」

 どんどん話が進んでいき、私は引きつった顔でうろたえる。

「考えさせたら逃げられそうだからな。かなりの大枚払ってばからしいパーティーを開いたんだ。こんな会は二度とごめんだ」

「逃げません。ただ考える時間を」

「うちに来て考えればいい。ほら、行くぞ」

 絢斗さんに手を掴まれ、エレベーターホールに連れていかれた。

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