エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 おバカな外科医の輩。

 詳しくいえば、窪塚と同じロイヤルブルーのスクラブ姿の若い男性医師四名。

 窪塚と同じ脳神経外科に属している者たちだ。

 内訳は、確か窪塚とは中高で一緒だったという同期の加納《かのう》奏《かなた》と他三十歳そこそこの先輩医師三名。

 同期の加納以外は名前もよく思い出せないから省いておく。

 加納は、窪塚ほどではないがそこそこ容姿も良くて、黒いメタリック調のシックな眼鏡のよく似合うおっとり系の好青年だ。

 性格も真面目なので、さっきのくっだらない話題にも興味なさげで、適当に相槌を打っているだけのようだった。

 ……お互い、周囲のバカたちのお陰で苦労するわよね。

 なんて、他人事のように、先輩医師の後方で驚いたように立ち尽くしている加納の姿を同情の眼差しで眺めていた私の耳に、おバカな先輩医師たちの放ったそれぞれの声が届いた。

「窪塚。お前、当直明けなのに何でまだこんなところにいるんだよ?」

「あっ、そうだ。そうだったなぁ。オペだってもうとっくの昔に終わってるのに」

「ってか、その前に、なんで鈴ちゃんのこと苛めてるんだよッ!」

「鈴ちゃんだって当直明けで疲れてんのに可哀想だろッ!」

 まぁ、確かに、こんな状況なだけに、誰だってそう思うのも当然かもしれないけど……。

 小学生の低学年が放つような低レベルの言葉にしか聞こえない。
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