エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 窪塚と初デートした日からもうそろそろ一月を迎えようとしているのだけれど、あれ以来二度ほど、仮眠室での情事を重ねただけで、窪塚とはそれきりまともに会えていないから余計だ。

 専攻医である私も窪塚も、日々の慌ただしい業務と専門医になるためのカリキュラムを熟しているからというのは勿論のこと。

 窪塚に至っては、同じ脳外科の医師であり上級医でもある院長の長男で彩の彼氏でもある樹先生が珍しい症例の新たな術式についての研究結果を近々学会で発表するにあたり、データをまとめたりといった論文の手伝いもあるとかで、かれこれニ週間あまり、会う時間もままならないという状況が続いている。

 普通のカノカレなら、会えない間、電話やメールのやり取りでのコミュニケーションという手段もあるだろうが。

 セフレでしかない私たちにはそれがないため、この二週間、ときたま院内でちらっと顔を合わせることはあっても、まともに会話すらできていない。

 まぁ、表向きにはカレカノではあるものの、実際にはただのセフレなのだから、当然と言えば当然なのだけれど……。

 同じ院内で働いているというのに、窪塚に会えないことで、余計に想いが募ってしまっている気がする。
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