エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
あと一時間もすれば昼休憩だったことで、指導医の指示のもと、そのまま窪塚と一緒に医局に戻ることになったのだが。
他に誰もいなかったこともあり、医局のPCに向かい黙々と、各所からあがってきていた検査結果や入院患者の経過などなどの電子カルテへの入力作業に没頭するフリを装うのが関の山だった。
内心では、さっきのことをどうやって取り繕うべきか。どう言ったら不自然じゃないだろうか。
否待てよ。もしかしたら、本当に体調が悪いだけだと思っているのかもしれないし。さて、どうしたものか……。
頭の中はそんなことで埋め尽くされてしまっていて、他のことに気を配るような気持ちの余裕など微塵も持ち合わせちゃいなかった。
そんなことをやっている私の元に、乱雑になっていた書類の整理を終えたらしい窪塚が背後から歩み寄ってくる気配がして、緊張感は一気に高まった。
――何を言われるんだろうか。やっぱりさっきのことだよね?
今から死刑宣告を言い渡されようとしている死刑囚にでもなったようで、生きた心地がしない。
そんな私の眼前に位置するデスクの上には、
『ほら、一息つけよ』
ぶっきらぼうにそう言ってきた窪塚がたった今置いたミルクティーのペットボトルが鎮座している。
死刑宣告がミルクティーに取って代わったもんだから、目をパチクリさせるしかなかった。
しかもそのミルクティーというのが、その頃私が嵌まってて、出勤する時いつも買ってきていたモノだ。