エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
それを分かった上でかどうかは、定かじゃないが……。
おそらくは、さっきのことで気落ちしてしまっている私のことを見るに見かねて、窪塚は窪塚なりに元気づけようとしてくれていたのだろう。
でも、その時の私には、先述のように、そんなことを汲み取るような心のゆとりなどなかった。
それほどに、私にとっては、外科医になるということが重要な意味を持つことだったのだ。
虚を突かれた私が吃驚して窪塚の方を見やれば、気まずげに首の後ろに手を当てて斜め向かいのデスクに向かう窪塚の後ろ姿が視界に飛び込んでくると同時に、窪塚の声が耳に流れ込んできて。
『別に、そこまで無理して外科医に拘んなくてもいいんじゃないか? お前にはお前の良さがあるんだし。実はさ、俺の兄貴ーー』
『なによ? 急に。外科医になりたくてもなれない可哀想な私に同情して、慰めてるつもり? アンタに私の何が分かんのよッ?! アンタのそういうとこスッゴイ腹立つッ!』
今まさに斜め向かいのデスクで私と同じように腰を落ち着け、PCに向かおうとしている窪塚の声をぶった斬るようにして、ケンカ腰で食ってかかってしまっていた。