堂くん、言わないで。


女の子たち全員がわたしを敵対視しているわけじゃない。

なかにはハブられているわたしに同情してくれる子もいた。


今回の調理実習では、比較的落ち着いたグループの女の子たちと一緒で。


普段あまり話したことはない。

たまに挨拶をする程度、だった。


いまはもう迷惑をかけるから、誰にも自分から声をかけないようにしている。


今日の実習中だってどう動いたらいいのかわからなかった。


マフィンのつくり方は知っていた。

趣味ってほどでもないけど、家でたまにお菓子をつくっているから。


それでもその技術を発揮することなく、終始ギクシャクしたままできあがったのがこのマフィンだ。


味はおいしかった。

試食するときだけちょっと盛り上がって、わたしが提案したドライフルーツとシナモンの組み合わせがすごくいいと褒めてもらった。


プレーンをつくるだけじゃ面白くないという家庭科の先生が、自腹を切って持ってきていたフルーツや抹茶、紅茶などのなかにシナモンもあったから。



『安藤さんの考えたマフィン、すごくおいしい』

『っ、あ、ありがとう……!』


だれかと会話すること自体がひさしぶりだったのでちょっと泣きそうになった。


それでも調理実習が終われば、またひとりぼっちに逆戻りなんだけど。


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