堂くん、言わないで。


「あーん……」


って、言っていいのかな?


さすがにバカにするなって怒られそうだと思ったけど、堂くんはなにも言わずに口をあけた。


ぱくり、とほぼ一口。

わたしとはぜんぜん違う一口の大きさに男の子を感じた。



「どう?」

「うまい」

「ほんとっ?うれしい」


意識しなくてもふにゃりとほおが緩んでいく。

いま絶対だらしない顔になってる。



「も、もう一個いる?」

「いる」

「どれがいい?えっとね、プレーンとくるみとバナナがあるよ!」

「みくるがおいしいと思ったやつ」

「えっと……えっと、選べないから全部あげるね」



にこにこ、わたしはずっと上機嫌。

このときばかりはハブられてることも忘れたくらい。


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