堂くん、言わないで。
「それにこの前お世話になったみたいだし……わたしが熱出したとき、棗くんが荷物持ってきてくれたんだって、あとから保健の先生に聞いたの」
じつを言うとあのときのことはよく覚えていない。
滅多に出ない熱にうかされるばかりで、記憶はあまり残ってなかった。
堂くんがいてくれたことは覚えてるんだけど……途中から記憶がなくて。
棗くんが来てくれたことにもわたしは気づけなかった。
「ふーん」
「え、重っ……」
ずんと肩が重くなって、堂くんの顔がうずめられていた。
猫が甘えるようなその仕草に時間差でどきりとする。
距離が近いというか、やっぱりバグってる。
好きでもない女の子にこんなことができるなんて、さすが王子と呼ばれるだけのことはある……かも?
ふわりとほおに触れる堂くんの黒髪。
それをなでたいと思っていると、堂くんがなにかをつぶやいた。