堂くん、言わないで。
「好きだから」







ぱっくりあいた心の傷は、ひらきっぱなしというわけでもなく。

時間が縫合するように、すこしずつ傷口をふさいでいってくれた。



ひとりで行動することも、ひとりでごはんを食べることにも慣れつつあった頃────





残すは終礼だけになったHRの時間にて。

わたしはこれまたひとりで黒板の前に立たされていた。



「あ、実行役員決まったんだ」

「安藤さんにできるのかな」

「決められないんじゃん?安藤さんだもん」


ひそひそと聞こえてくる声に、いますぐ自分の鼓膜をぶち抜きたくなる。




わ、わたしだって不本意なんです……!!


心の叫びはだれにも届かない。



ことの始まりは数時間まえ、お昼やすみでの出来事だった。


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