堂くん、言わないで。
『今日のHRでだれか男子の役員も決めて、それから出し物まで決めてもらうからな!俺も助け舟を出すから、今日中にたのむぞ!じゃないと俺は…俺は……うわぁぁぁ!』
完全にビビっているわたしは、こくこくとうなずいてやっと解放してもらった。
その先生はいま、教室のうしろでこくこく舟をこいでいる。
つまるところ寝ていた。
助け舟を出してくれるんじゃなかったの……!?
ろくに人前に立ったことのないわたしだけでどうしろと?
「ええと、男子……で、だれか役員に立候補してくれる人はいませんか」
もはや疑問形にさえしない。
だってすでに、前回のHRで何度も先生が訊いている。
それでも決まらなかったんだ。
いまから1ヶ月後に行われる文化祭の実行役員。各クラスで男女イチ名ずつ。
放課後とか残らないといけないし、やることも多いと聞く。
だれもやりたがらなくて当然だった……けど。