堂くん、言わないで。


わたしたちだけが世界に取り残されたような、まるで人けのない踊り場。



「ひとつ訊きたいことがあって」

「またその流れ」


棗くんがふっと笑う。


正直、棗くんなら女の子なんて選び放題だと思う。


わたしよりもずっと魅力的な女の子たちが彼のまわりにはたくさんいて。

好意をもって接してくれている子もいるはずだった。


それなのに、なんで……



「わたしなんかのどこを好きになってくれたの?」


棗くんはすこし考えるように黙った。

答えはとっくに出ていて、それをどう伝えるか悩んでいるようにも見えた。


しばらくして、そっと口をひらく。



「……弱さを見せてくれたから、かな」

「弱さ?」



「そう、弱さ。自分のこういうところがいやだ、って。みくるちゃんは俺に話してくれたよね?」



最初、棗くんと話したときのことを思い出す。

あのときのことはよく覚えていたから、こくりとうなずいた。


棗くんはほほ笑む。



「そういうことを他人に包み隠さず話せたり、涙を見せたりできる人はね……強いんだよ」


どくんと胸が鳴った気がした。



弱さをみせたわたしが強い?

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