堂くん、言わないで。
ナイトベールに包まれて、







はだ寒いと感じる日が増えてきた。


あの日のことはなにも堂くんに言わなかった。


棗くんとのことも。
あのとき隣にいた女の子のことも。


言ったらすべてが変わってしまいそうで、わたしはいまの日常を失いたくなくて。



なにもかも黙って、今日も放課後の図書室に足を運んでいた。



「みくる。お前さ」

「なあに?」

「前にも増して目合わなくなったんだけど」


ぎくり、と思わず肩が跳ねあがりそうになった。

そんなに露骨じゃなかったと思うんだけど。


あわてて書架から顔をあげて、テーブル席のほうにいる堂くんに笑いかける。



「そうかな?気のせいだよ」


笑うことは得意だ。

いままで何度もこれで乗り越えてきたから。


ただ、堂くんには見抜かれてしまいそうで。

わたしはほどほどに、顔を書架のほうに戻した。




──すこし恐ろしくさえあるんだ。


自分で自分をコントロールできなくて、気がつくと堂くんのことばかり考えてしまう。


いや……それは前からだった、かも。



いちど自覚してしまうと気持ちは募るばかり。


わたしはいま、どうしようもないジレンマに陥っていた。


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