堂くん、言わないで。


思わず後ずさりそうになったけど、ぐっと耐えて視線をあげた。



「っ、わかってます」

「は?」

「つり合わないのも、本気にしても無駄なのも、見苦しいのも……ぜんぶわかってて、わたしは堂くんの近くにいます」


両想いの相手の前で、こんなこと口にするのもおこがましくて。

だけど言わずにはいられなくて、わたしはスカートの裾をぎゅっとにぎる。



「……なにも言われてないんです」

「なに?さっきから、意味わかんない」



堂くんはまだ、言わないでいてくれてるから。

わたしもそれに甘えるしかないんだと思う。


言っても終わり、言われても終わり。


タイムリミットが近づいていることには気づいてる。




「わがままなのはわかってます……それでも、もうすこしだけ」


もうすこしの間だけ、堂くんと一緒にいたいんです。



女の子がじっとわたしを見た。

睨むようでもあったから怯みかける。


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