堂くん、言わないで。


わたしがいきなり振りかえるとは思わなかったんだろう。

一瞬おどろいたように目を見開いた堂くんは、すぐに視線を逸らした。


わたしもわたしで、顔をそらして、どきどきする心臓を落ち着かせる。



な、なに……?いまの……




「……俺の髪が、なに?」

「や、あの……堂くんの黒髪もいいよね、って……」

「……ドーモ」

「あの、……うん。はは……」



なんだか暑くなってきた。

気のせいじゃなくて、本当に体温がぐんぐん上がっていってる。


恥ずかしくて顔をあげられないでいると、そっと耳に触れられて。


びくりと跳ねる。

冷たくて骨張った、男の子の手だった。



「……耳、真っ赤なんだけど」

「ゃ、う、見ないで……」


きっとわたしだけがこんなに反応してるんだ。


もうやだ、慣れてないことがバレバレ。


耳を隠すようにすると、ぎゅっと後ろから抱きしめられる。


堂くんの冷たい身体がちょうどいい。



どくん、どくん。


つよく鼓動を刻むそれを感じながら。

予鈴が鳴るまで、わたしたちはそうしていた。




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