君との恋の物語-Reverse-

待ち合わせの日、せっかくの休みなのにいつもより早く目が覚めてしまった俺は、仕方ないから待ち合わせ場所まで行くことにした。
1番気に入ってる服を着て、珍しく髪も整えて。

それだけ気合いを入れても30分前に着いてしまった。早過ぎた。
こんな時は本でも読むか。




だめだ、集中できない。
そうか!デートコースを決めるか!
ちょうどメリーゴーランドで待ち合わせだから、ゴールもここにしよう。まずは真っ直ぐ映画館に行って、ちょっと早いけどチケット買って、今日は飲み物とポップコーンは買ってあげることにしよう。
するとお昼はマックかな。予算的に。
そこから左回りにお店を見て回って、ゲーセン行ってスタバ、最後にまたここに戻ってきて、時間があったら夕陽見に行くか。
うん。いいかもな。
ん?きた?なんかすごい可愛い格好をしてるような‥
とりあえずこっちから声掛けなきゃ!
『おう!おはよう。』
「おはよう」
待ち合わせ10分前。なんかちょっと拍子抜け。ちょっと遅れてきて、ごめーんまったー?みたいな展開かと思ってたのに。って漫画の読みすぎか。
とりあえず気まずくならないように、この間みたいなテンションで!
『楽しみだな。君の名は?ってちょっとリアルに言ってみたいセリフだよね』
「うん、言ってみたいけど、言われてみたいセリフでもあるね。なんか、ロマンチック」
そうか、じゃ後で言ってみよう。俺に言われても嬉しくないかもだけど‥。

映画館に着いたらチケット買って、なんだっけ?
そうだ、ポップコーン!
『ぎりっちょさ、ポップコーンは塩?キャラメル?』
名前で呼ぶって、やっぱり恥ずかしくて簡単にはいかないな‥
「うーん、塩かな。あ、飲み物は炭酸じゃないやつね!」
おう。俺が買ってあげようって決めてたのわかってたのか?君は超能力者か‥?
『あー、わかってるって。』

早く待ち合わせただけあって、席はいいところ取れたな。
話の内容は、まぁ劇場で笑
いい話だったけど、切なくなった。盛り上げなきゃ!!
映画の後は、さっきのデートコースで。
言ってみようか。あのセリフ。
超絶恥ずかしいけど。
『ねぇ』
「え?なに?」
『君の名は!』
「え?」
え?じゃないよ、結構恥ずかしいんだって!けどもう一度!
『君の名は??』
「‥さぁ、なんでしょうか??」
おーい!こっちは恥ずかしいながらも頑張って言っただぞ!
『おいおいおいおいー!普通に答えちゃうんかい!せっかく映画っぽいトーンで言ってるのに!』
更に言うならこんなに恥ずかしいのに。
「あぁ、ごめん。」
なんか雲行きが怪しい‥けど、ここで負けてはいけない。
『映画だと同時だけど、まぁそれは無理として、君の名は!って言ったら同じようなトーンで返そうぜ!雰囲気大事!!』
一人で盛り上がってる人みたいになったぜサンキュー。
「わ、わかったよ」
あー、ひかれてる気がする‥けど。言ってしまった手前区切りつけなきゃ!
『よし。‥君の名は!』
割とマジなトーン。
「君の名は!」
すごいな。俺よりマジなトーン。ってことはまんざらでもない‥?っと思ったらちょっとテンション上がってきた!!
『いいね!最高!!やればできるじゃんぎりっちょ!!』
恥ずかしかったけど、楽しい!
『今日はこの後も何回き言うんでよろしく!!』
言わないかもだけど。

その後はさっきのデートコースへ。なんか、君と一緒にいると、頑張って盛り上げなくてもいいのかなって思えてくる。君はおとなしいけど、それなりに楽しんでくれてるように見えた。
いいなぁ、自然な笑顔。この笑顔に何人の男が魅力を感じてるんだろう。
今は二人っきりだけど、明日からまた皆と一緒‥怖いな‥君が誰かと一緒に、俺から離れていきそうな気がして‥。
デートは本当に楽しいけど、どうしても時間を気にしてしまう。すると、どうしても終わりを感じてしまって切なくなるんだ。
なんて思ってたら着いてしまった‥。

『よし、着いた。戻ってきたね!』
やばい、終わってしまう‥。
「え?なに?ここ目指してたの?」
『そう。スタートとゴール同じ場所がいいんだよ。』
ゴールって口に出してしまって、ますます実感してしまった‥デートが‥終わる‥。
「そうなんだ‥」
まずい、なんか暗い雰囲気だ。なにか話さなきゃ、スタートと、ゴール。そうだ!
『ディズニーランドの出入り口って一ヶ所しかないだろ?あれは、全ての人に同じところからスタートしてもらって、同じところにゴールしてもらうためなんだよ。夢の始まりと終わりね。』
「そうなんだ‥」
言ってから後悔した。まさか、君がそんなに悲しそうな顔するなんて‥。君も、悲しい?
俺は自分で言っておきながら、悲しくなった。勝手だけど。
今日が楽しかったから、明日にならないでほしい。いや、明日になってもいい、君が一緒にいてくれるなら。
夢が覚めてしまうと思ってたけど、夢じゃなくすることができたら‥。君の悲しい顔は見たくない。できるなら守りたい。いつでも笑顔でいてほしいから。
言おう。今、ちょっと悲しい雰囲気になってしまったけど、それはもしかしたら、君も今日が楽しいと思ってくれてたからなんじゃないかなって思うから、今日のことをどう思ってるか、答え合わせしよう。決めた。
『乗ろうよ。』
「え?」
『メリーゴーランド!』
「いいけど‥」
ごめん。本当はものすごく怖い。フラれたら、明日からまともに話もできなくなると思うと泣きそうなんだ。だから、ちょっとだけ誤魔化した。
『よっしゃ!』
こういう時は、相手に顔を見られないようにどんどん前をいく。
テンション上げてれば、怖くなくなってくる!!はず!!
お、追いついてきた。
『俺が馬に乗って、さぎりが馬車に乗るのと、二人とも並んで馬に乗るのどっちがいい?』
もう、名前で呼べなくなるかもしれないから、呼ばせてくれ。
「うーん、並んで馬‥かな」
よかった。突っ込まれなかった。
それに、並んでくれるって嬉しいな。
『並べるのか、さぎりと。いいね。』
思わず口に出してしまった。

メリーゴーランドって不思議だ。ぐるぐると、同じところを回っているはずなのに、毎回別の世界を通ってるような感じもする。だって、一週目に見た時にいた人が、歩いていなくなってたり、逆にいなかった人がいたりするから。
それに、メリーゴーランドの中と外では、違う世界が並行しているみたいだ。その世界を並んで見られてよかった。
これなら、フラれても後悔はないよ。
あの夕陽が見られる大好きな場所で、告白しよう。
けど、一応確認しとかなきゃな。
『さぎりは、何時にここを出たらいい?』
「うーん、6時くらい?」
『後1時間ちょっとね、OK。こっちきて!』
どんどんいくよ、着いてきて!もし、優しさで付き合ってくれてたんだとしたら、これで最後にするから。
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