愛され、囲われ、堕ちていく
買い物が終わり凪沙がトイレに行った為、伊織はトイレ前で煙草を吸っていた。

「ねぇ…君、可愛いね~」
「はぁぁ?誰、お前」
そんな伊織に女性三人組が話しかけてきた。
可愛らしい容姿の伊織。
学生時代から犬系男子と言われていた。
伊織が暴走族に所属したのも、それも理由である。

「一人?学生さん?」
「は?」
「私達と遊ばない?」
「可愛い~!」
「…るせーよ…ババァ……」
「え?」
ガン━━━━!
「いいか!俺は一人で来てねぇし、学生でもねぇし、お前等みたいなババァと遊ばねぇ…
わかったら消えろ…!!」
壁に押さえつけられ、咥え煙草の伊織の黒い雰囲気が迫る。
「は、はい…ごめん、なさい…」

「伊織…?」
「あ、凪~!遅いよ~」
パッと表情が変わり、満面の笑みになる伊織。
そして包み込むように、抱き締めた。
「ごめんね…」
「帰ろ?」
凪沙に目線を合わせて言った。

「何、あれ…?」
「全然表情違うし…」
「てか、彼女だよね?」
「似合わないし……」

「あ?
おい、ババァ…!!
消えろっつたよな…!?」
先程の女性達に向き直り、凄む伊織。
咥えていた煙草を、女性達に投げつけた。
「ちょっ…熱っ…!何すんのよ…!?」
「そんなにお望みなら、遊んでやろうか?」
「え?」
「その代わり、生きては帰れねぇよ!
どうする?」
伊織の不気味な笑みに、退く女性達。

「伊織!!」
「ん?」
凪沙にはとても優しい表情をする、伊織。

「もうやめて!?
早く、帰ろ!」
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