不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「大出血が起こる可能性があるって……」


 調べていて思わず青褪めたのはそこだ。

 どのページを見ても〝ハイリスク出産〟という記述があり、出血が酷い場合は最悪命を落とすこと、更に輸血が必要になることもあると書かれている。

 まさか、出産で輸血をすることになるかもしれないなんて、想像もしていなかった。

 妊娠してから『出産は命がけ』という言葉をよく耳にするようになったけれど、こういう意味だったんだと改めて実感した。


「あ……」


 と、いつになく暗い気持ちで歩いていたら、不意に携帯電話が震えた。

 見れば着信相手は灯で、私は一瞬躊躇ってから電話を取った。


「もしもし……」

『牡丹? 検診はどうだった? 今日はどうしても外せない商談があって、ついていけなくて悪かった』


 電話口から聞こえてきた優しい声に、それまで張り詰めていた気が緩んで思わず鼻の奥がツンと痛む。


「灯……私……」

『牡丹、何かあったのか?』

「ちょっと、今日の検診で胎盤に異常が見つかって……。それで、今まで通ってた病院で出産するにはリスクが高すぎるからってことで、中央総合病院の紹介状をもらって転院することになったの」


 努めて冷静に、現状を灯に伝えた。

 こんなことでメソメソしていたらダメだ。私はお腹の子の母親なんだから、強くいなきゃいけないと自分に言い聞かせて気持ちを奮い立たせた。

 
< 103 / 174 >

この作品をシェア

pagetop