今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「あのさ俺、チーにもう一つ大事な話があるんだけど」


「う、うん」


彼がスッと真剣な表情になるから、緊張して身構えてしまった。


昨日のことが蘇ってきて思わず後ろへ下がった。


「そんなに警戒するなよ」


彼はフッと苦笑いをする。


「あ……えっと」


すかさずぬいぐるみのポンちゃんを手繰り寄せて胸の前でギュッと抱きしめた。


「まいったな、そんなに怖がられるなんて」


でも、言葉ほどに困ってる様子ではなくて、むしろ嬉しそうだ。


まただ、これまで見たことがないような男の人の顔。


そんな彼に思わず見惚れて胸がドキドキと高鳴っていく。


「チー、俺さ……」


「う、うん」


「……」


「……」


だけどしばらく待っても彼の次の言葉が続かない。


ふしめがちになった兄の頬はかすかに赤いような気がした。


「あの」


「うん」


「とりあえず手を繋いでもいい?」
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