今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
熱い目でじいっと見つめてくるものだから、一瞬ドキッとした。


「なにかあったらすぐに連絡して。あとその西原って奴の家の住所を教えて」


「ダーメ」


母が見ているような気がしたので急いでその手を振り払った。


『チーのことを女の子として好きなんだ』


先日の彼の告白が頭をかすめた。


兄が私のことをただの妹として見ていないってことが両親にバレやしないかヒヤヒヤしていた。


こんなやりとりひとつでも、私達の仲を疑われたりしないかと不安になる。


ひきかえ彼はバレても構わないって感じなので余計に困ってしまう。


「お兄ちゃんの言うことが聞けないのか。チーはそんな悪い子じゃないだろ」


とうとう兄の権力をかざしてこんなことを言ってきた。


「もうっ、すぐにお兄ちゃん風を吹かすんだから」


「ふ、ふかすっておまえ……」


うんざりしてそうこぼしたら、途端にムッとされた。
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