今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「でも……」


悲壮な表情を浮かべる兄。


何もそこまで心配しなくてもって思うけど本人はいたって真剣みたい。


男子が多いからって、まさか襲われるわけじゃないんだから。


「大丈夫だから」


「せめて送り迎えはやらせて」


「駄目、これ以上変な噂になったら嫌だもん」


ちょっときつめに断ったら、シュンと肩を落とす彼。


「チーに何かあったら……」


この世の終わりみたいな顔をしてとうとう項垂れてしまった。


「……」


さっきまではプリプリ怒っていたんだけど、悲しそうにされると困ってしまう。


「もう、本当に大丈夫だから。それに今日は翔くんだって向こうのお宅へ行く日だし忙しいでしょ」


そうそう、兄も今日予定があって伊集院家に出かけなきゃいけないらしい。


「ほら、そろそろ翔くんも着替えて準備してきたら?」


優しく声をかけてなだめようとしたら、突然ぎゅっと手を握られた。
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