今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
しばらく歩いてから振り返ると兄はまだ素振りを続けている。


高速でバットを振りつづけるその姿は鬼気迫るものがあり……。


激しい苛立ちを鎮めるためにバットを振っているように見えなくもない。


なんて無茶な素振りだろう。


「……」


まるで自分を痛めつけるみたいな、そうやって何かに耐えているように見えた。


「ごめん西原くん、ちょっと待ってて」


「あ、うん」


どうしょう、このまま兄を放ってなんていけない。


タタッと足音をたてながら兄に近寄った。


彼は息も荒くて汗だくだったからびっくりした。


「翔くん、ごめんなさい」


「……いや、こっちこそ」


片手で額の汗を拭う彼の横顔はどこか切なげで……。


「いつまで素振りなんてやってるの?」


「倒れるまで……」


「え……」


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