今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「そしたらチーが帰ってきてくれるから」


そんなことを本気で言ってるのかな。


もしそうだとしたら、本当に馬鹿だよ。


不安そうな顔で彼を見たら、フッと皮肉な笑いを浮かべる兄。


「嘘だよ。早く行けよ」


「もういい加減にやめて早く家に戻ってね」


「わかってる」


チラッと目だけでこっちを見て、またバットを振り始めた。


「私、なるべく早く帰るからあんまり心配しないで」


「ああ」


捨てられた猫みたいに寂しそうな後ろ姿。


こんなのズルいよ、翔くん……。


もう、本当に。


心配症でどうしようもない兄だけど。


なるべく早く帰って安心させてあげなきゃって思った。


そんな風に思う私もどうしょうもないのかな。


どうしょうもないくらい、兄のことで心がいっぱいなんだ。
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