今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
翔くん……。


彼は眉を下げて小さく息を吐いた。


「……」


「ごめん、帰らなかったこと怒ってるよな。でも俺はチーに早く会いたかったよ」


「……」


「凄く会いたかった」


その言葉がジワリと胸にしみこんできた。


彼も私と同じ気持ちだったんだって思ったら嬉しくて。


「チーが足りなくて寂しくておかしくなりそうだった」


「翔く……」 


あれ、私の声かすれてるみたい。


鼻の奥もツンと痛い。


彼は私の顔を覗きこむと、困惑したように瞳を泳がせた。


「チー、大丈夫?」


「……ウウッ」


「えっ、ど、どうした?」


私の異変に気がついた兄の焦ったような声。


波が押し寄せるみたいに目頭がどんどん熱くなって視界がぼやけた。


彼の表情もぼんやりゆがむ。


「ヒクッ……うう……」


やだもう、こんなはずじゃなかったのに。


どうして私泣きそうになってるの?
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