今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

私を見つめる優しい瞳。


吸い込まれそうなくらいキラキラしている彼にうっとりと見惚れる。


ギュッと手を握りなおしたその時。


私の甘い考えを打ち砕く現実に引き戻された。


「千桜？」


後ろから聞きなれた声に名前を呼ばれて背筋が凍りついた。


その瞬間、びくりと肩を震わせて慌てて繋いでいた手を離した。


明らかに不自然な態度をしてしまったことに全然気がつかない。


「お、お父さん」


振り返ると、思ったとおりそこにはスーパーの袋を両手に持った父が立っていた。


怪訝そうに私たちを見つめている。


気まずくて視線をそらせてしまった。


「いま帰り？あれ母さんは一緒じゃないの？」


私とは違い落ちついた声で父に尋ねる翔くん。


だけど父はそれには答えずに硬い表情で口を開く。


「おまえ達、今手を繋いでなかったかい？いつもそんな感じなのか？」


「ち、ちがうよっ、そんな、してないよ」